ぬりえる

高齢者が塗り絵を「もうやらない」と言い出す、3つの本当の理由

高齢者塗り絵介護

「お母さん、せっかく塗り絵買ってきたのに、全然やらなくなっちゃった」

こういう話、よく聞きます。デイサービスのスタッフさんからも「最初は楽しんでたのに、最近は手をつけなくなった利用者さんがいる」という声をいただきます。

塗り絵は認知症予防にいいと言われていますが、続かなければ意味がありません。なぜ高齢者は塗り絵をやめてしまうのか。「飽きた」の一言で片付けてしまいがちですが、実際にはもっと具体的な理由があります。

理由1 「はみ出すのが恥ずかしい」

これが一番多い理由です。

加齢とともに手指の巧緻性(こうちせい)は低下します。特にパーキンソン病や本態性振戦などで手が震える方は、どうしても線からはみ出してしまいます。

「きれいに塗れない」→「下手だと思われる」→「やりたくない」

この心理的なハードルは、思った以上に大きいです。高齢者の方は「人前で恥をかきたくない」という気持ちが強い方が多いので、一度はみ出しが気になると、塗り絵自体を避けるようになります。

特にデイサービスのように他の利用者さんがいる場所では、隣の人と比べてしまうこともあります。「あの人は上手なのに、私は……」と感じてしまう。

対策としては、はみ出しても目立たない太い線の塗り絵を選ぶことです。線が細いと少しのはみ出しでも目立ちますが、線が太ければ多少のズレは気になりません。デジタルの塗り絵なら「はみ出し防止機能」を使うという手もあります。詳しくは「手が震えて塗り絵ができない、を解決する方法を考え続けている話」をご覧ください。

理由2 「終わらないからつまらない」

書店で売っている「大人の塗り絵」を見たことがある方は多いと思います。きれいな花や風景の、細かいイラストが描かれているやつです。

あれ、完成までに何時間もかかります。若くて集中力がある人なら楽しめますが、高齢者にとってはハードルが高すぎます。

15分くらいで疲れてしまう方に、3時間かかる塗り絵を渡しても、それは「未完成の絵」が手元に残るだけです。「また続きをやらなきゃ」がストレスになったり、「完成できなかった」という挫折感だけが残ります。

介護現場のレクリエーションの時間は、だいたい30分〜1時間です。この時間内に完成できないと「楽しかった」という記憶にならないんです。

対策はシンプルで、パーツ数を減らした塗り絵を用意することです。8〜15パーツくらいのものなら、5分〜15分で完成できます。完成する体験が「またやりたい」につながります。

理由3 「毎回同じで飽きた」

デイサービスで塗り絵レクをやっている施設の多くは、無料の塗り絵サイトからダウンロードしたものを印刷して使っています。このあたりの現場の実態は「デイサービスの塗り絵レク、現場のスタッフさんに聞いたらリアルだった」でまとめています。

ただ、無料サイトのイラストは数に限りがあります。しかも高齢者向けに適切な難易度のものとなると、さらに選択肢が狭まります。

結果として「また花か」「また動物か」と、同じようなモチーフの繰り返しになりがちです。スタッフさんも忙しいので、毎回新しい塗り絵を探す時間がなかなか取れません。

これ、利用者さんが悪いんじゃなくて、仕組みの問題なんです。

対策としては、季節や行事に合わせたテーマの塗り絵を定期的に入れ替えることです。桜の季節には桜を、お正月にはお正月の柄を。「今月のお題」があると、「今週は何かな」というワクワク感が生まれます。

実は「飽きた」ではなく「つらい」

3つの理由を並べてみると、共通点が見えてきます。

「はみ出す」「終わらない」「同じ」——どれも「塗り絵が楽しくなくなった」原因です。つまり高齢者が塗り絵をやめるのは、飽きたからではなく、つらくなったからです。

逆に言えば、この3つを解決すれば塗り絵は続けられます。はみ出さない仕組み。短時間で完成する設計。毎回新しいテーマ。

私たちが「ぬりえる」を作っているのは、まさにこの問題を解決するためです。デジタルの力で「つらい」を取り除いて、「楽しい」だけが残る塗り絵を届けたいと思っています。

もし、ご家族や施設で「塗り絵が続かない」とお困りの方がいたら、原因は本人ではなく塗り絵の側にあるかもしれません。