ぬりえる

「塗り絵が認知症予防にいい」って本当?調べてわかったこと

認知症予防塗り絵研究データ

「塗り絵が認知症予防にいいらしい」という話、最近よく耳にしませんか。

テレビや雑誌でも取り上げられることが増えましたし、書店に行くと「脳トレ塗り絵」みたいな本がずらっと並んでいます。でも「本当に効果あるの?」と聞かれると、ちゃんと答えられる人は少ないんじゃないかと思います。

気になったので、論文や研究データをもとに調べてみました。

脳の中で何が起きているのか

塗り絵をしているとき、脳ではかなり複雑な処理が走っています。

まず「どこを塗るか」を目で見て判断します。これは視覚認知です。次に「何色にしようか」と考えます。ここで判断力や記憶が使われます。そして実際に手を動かして色を塗る。ここで運動機能が働きます。

つまり塗り絵は「見る」「考える」「手を動かす」という3つの脳機能を同時に使っている行為なんです。

テレビを見ているときは「見る」だけ。計算ドリルは「考える」だけ。塗り絵はこれらを複合的に使うので、脳への刺激が多いとされています。

研究データで見る効果

2020年に発表されたある研究では、高齢者が週に3回、30分間の塗り絵を3ヶ月間続けたところ、注意力と短期記憶のテストスコアが改善したという結果が出ています。

また、アメリカの認知症ケアの現場では、塗り絵が「構造化されたアクティビティ」として広く取り入れられています。構造化されたアクティビティとは、ルールや手順が決まっていて、迷わず取り組めるもの。認知症の方は「自由にどうぞ」と言われると混乱しやすいのですが、塗り絵は「この線の中を塗る」というルールがはっきりしているので取り組みやすいわけです。

ほかにも、塗り絵をしているときにストレスホルモン(コルチゾール)の値が下がったという報告もあります。ストレスは認知症の進行を早める要因のひとつなので、間接的な予防効果があるとも考えられています。

「予防」と「改善」は違う

ただし、ここで注意が必要です。

塗り絵で認知症が「治る」というデータは、今のところありません。あくまで「脳を活性化させる」「進行を穏やかにする可能性がある」というレベルの話です。

すでに認知症が進行している方に塗り絵を渡しても、「何をすればいいかわからない」と混乱してしまうケースもあります。効果があるのは、ご本人の状態に合った塗り絵を、無理なく続けられる環境で取り組んだ場合です。

ここは結構大事なポイントで、「塗り絵をやらせれば大丈夫」という単純な話ではないんです。実際、続かなくなってしまう原因は別の記事「高齢者が塗り絵を「もうやらない」と言い出す、3つの本当の理由」で詳しくまとめています。

どんな塗り絵がいいのか

研究や介護現場の知見をまとめると、認知症予防に向いている塗り絵にはいくつかの共通点があります。

まず、線が太くてはっきりしていること。細い線だと「どこを塗ればいいかわからない」という問題が起きます。

次に、パーツの数が多すぎないこと。50個も100個もパーツがある複雑な曼荼羅(マンダラ)は、集中力が持続しにくい高齢者には向きません。8〜20パーツくらいが目安です。

そして、5分〜15分で完成できること。30分以上かかるものは途中で疲れてしまい、「完成できなかった」というネガティブな体験になりがちです。達成感を得られることが、続けるモチベーションになります。

あとは、季節や身近なものがモチーフであること。花や風景、季節の行事など、ご本人が「知っているもの」だと取り組む意欲が上がります。抽象的なデザインより、具体的なモチーフの方が会話も生まれやすいです。

デジタルと紙、どっちがいいのか

最近はタブレットやスマホで塗り絵ができるアプリも出てきています。

紙の塗り絵とデジタルの塗り絵、どちらがいいのかという議論は海外でも行われています。結論から言うと、「どちらにもメリットがある」というのが現状の見解です。

紙の塗り絵は、鉛筆やクレヨンを握る「触覚」の刺激があります。これは手指の運動として優れています。

一方、デジタルの塗り絵は「失敗しても元に戻せる」「はみ出さない設定にできる」「完成したら画面上で褒められる」という利点があります。特に手が震える方にとっては、紙だとどうしてもはみ出してしまって挫折するケースが多いのですが、デジタルならその問題を技術で解決できます。この点は「手が震えて塗り絵ができない、を解決する方法を考え続けている話」で掘り下げています。

どちらが優れているかではなく、ご本人が「楽しく続けられる」方を選ぶのが大事です。

まとめると

塗り絵は認知症予防に一定の効果が期待できます。ただし、魔法の杖ではありません。

大切なのは3つです。ご本人の状態に合った難易度を選ぶこと。短時間でも「できた」という達成感を得られること。そして、無理なく習慣として続けられること。

この3つが揃えば、塗り絵は認知症予防のための手軽で取り組みやすい手段のひとつになります。

私たちが「ぬりえる」で目指しているのは、まさにこの3つを技術の力で実現することです。手が震えても塗れる。5分で完成できる。毎日の習慣にできる。そういうサービスを作っています。