ぬりえる

親が認知症と診断されたとき、子どもにできることを調べてみた

認知症家族日常生活

ある日、病院から「お母さん、認知症の初期段階ですね」と告げられた。

そういう経験をした方が、この記事を読んでいるかもしれません。

最初はショックを受けます。そして「何をすればいいんだろう」と途方に暮れます。ネットで検索しても、出てくるのは介護保険の申請方法や施設の一覧ばかり。制度の話は大事ですが、もっと手前の「日々の暮らしの中で何ができるのか」がなかなか見つかりません。

そこで、医学的な知見と介護の現場から得られている情報をもとに、「今日からできること」を整理してみました。

まず知っておきたいこと

認知症と診断されても、すぐに何もできなくなるわけではありません。

特に初期段階では、日常生活の多くのことは自分でできます。会話もできるし、食事もできるし、テレビも楽しめます。ただ、新しいことを覚えにくくなったり、日付がわからなくなったり、同じことを何度も聞いたりすることが増えてきます。

大事なのは「進行を遅らせる」ことです。認知症は現在の医学では完治させることができませんが、進行のスピードを穏やかにすることは可能だとされています。

そのために有効と言われているのが「脳を使い続けること」「体を動かすこと」「人と関わること」の3つです。

「何かやらせなきゃ」のプレッシャー

「脳を使う活動をさせてください」と医師に言われて、計算ドリルや脳トレアプリを買ってくる方は多いです。塗り絵も選択肢のひとつですが、本当に認知症予防に効果があるのかは気になるところだと思います。

でも、渡しても本人がやらないケースがすごく多い。

理由は簡単で、計算ドリルは「楽しくない」からです。もともと計算が好きだった人ならいいですが、そうでなければ義務感だけでは続きません。ましてや認知症で集中力が落ちている状態で、嫌いなことを続けるのは無理があります。

子ども側も「せっかく買ったのにやらない」→「お母さんもっとやらないと」→ 関係がギクシャクする、という悪循環に陥りがちです。

ポイントは「脳を使う」ことではなく「本人が楽しめる」ことを優先することです。

楽しめる活動の選び方

本人が楽しめる活動を見つけるコツは、「昔好きだったことのバリエーション」を探すことです。

たとえば、料理が好きだった人なら簡単な調理や盛り付け。園芸が好きだった人なら鉢植えの水やり。手芸が好きだった人なら、簡単な編み物や折り紙。

塗り絵は、絵を描くのが好きだった人だけでなく、花が好きだった人、季節の行事を大切にしていた人、きれいなものを見るのが好きだった人にも合いやすいアクティビティです。ただし続かなくなるケースもあるので、選び方にはコツがあります。

選ぶときの基準は3つあります。

ひとつ目は「5分〜15分でキリがつくこと」。長時間の集中は難しいので、短い時間で「できた」と感じられるものが向いています。

ふたつ目は「失敗が目立たないこと」。間違えたり失敗したりすることが明確にわかる活動は、自信を失わせます。正解がない、あるいは「どれも正解」と言えるものが良いです。塗り絵は「何色に塗っても正解」なので、この点で優れています。

みっつ目は「一人でもできるし、一緒でもできること」。子どもが帰省したときに一緒にやれるし、普段は一人でも取り組めるもの。

離れて暮らしている場合

認知症の親と離れて暮らしている子どもにとって、最大の不安は「今日はちゃんと過ごせているだろうか」です。

電話をしても「元気よ」としか返ってこない。それが本当なのか、そう言っているだけなのか。かといって毎日電話するのも、お互いに負担になります。

見守りカメラを設置する方もいますが、親御さんが「監視されている」と感じてしまうケースもあります。

最近は「活動の記録が自動で家族に届く」というアプローチもあります。たとえば塗り絵をデジタルでやると、「今日も1枚完成しました」という通知が子どものスマホに届く。完成した作品の画像も見られる。

これなら「監視」ではなく「作品を共有する」というポジティブなつながりになります。1日やっていないことに気づいたら、電話する理由にもなります。

デイサービスという選択肢

認知症の初期段階でも、デイサービスを利用できます。

「デイサービスなんてまだ早い」と思う方もいるかもしれません。でも、初期の段階から週に1-2回でもデイサービスに通うことで、人と関わる機会が増え、レクリエーションで脳を使う機会ができます。

デイサービスでは塗り絵、体操、カラオケ、脳トレなど、さまざまなレクリエーションが行われています。プロのスタッフが状態を見ながら対応してくれるので、家族の負担も減ります。

介護保険の要支援・要介護認定を受けると、費用の1-3割負担で利用できます。まだ申請していない方は、地域包括支援センターに相談してみてください。

できることをひとつずつ

認知症は長い付き合いになります。

子どもとしては「もっと何かしてあげたい」という気持ちになりがちですが、頑張りすぎると自分が倒れてしまいます。

完璧な介護は存在しません。今日できる小さなことを、ひとつずつ積み重ねていく。本人が笑った瞬間があったら、その日はそれで十分です。

私たちは「ぬりえる」というデジタル塗り絵サービスを作っています。離れて暮らす親御さんが、スマホやタブレットで毎日少しずつ塗り絵を楽しめて、その記録が家族に届く。そういう仕組みを目指しています。

すべてを解決することはできませんが、日々の暮らしの中にひとつ「楽しみ」を増やすことはできるかもしれません。