リハビリの現場で、塗り絵が取り入れられているのをご存じですか。
脳卒中の後遺症や高次脳機能障害のリハビリテーションにおいて、作業療法のひとつとして塗り絵が使われるケースが増えています。理由はシンプルで、塗り絵は「手を動かす」「目で見る」「考える」を同時にやる作業だからです。
リハビリというと、つらいトレーニングのイメージを持つ方も多いと思います。でも塗り絵なら、本人が楽しみながら取り組めるという大きなメリットがあります。
なぜリハビリに塗り絵が使われるのか
塗り絵がリハビリに向いている理由は、使う脳と身体の機能が多いことにあります。
まず、手指の巧緻性(細かい動き)の訓練になります。色鉛筆を握って、線の中を塗る。この動作には、指先のコントロールが必要です。脳卒中の後に手指の動きが鈍くなった方にとって、これ自体が立派な機能訓練です。
次に、視覚と運動の協調(ビジュアルモーターコーディネーション)が鍛えられます。「この線の中を塗ろう」と目で認識して、手をそこに持っていく。見たものに合わせて手を動かすという、日常生活では当たり前の動作ですが、脳にダメージを受けた方にはこれが難しくなることがあります。
さらに、注意力の持続や集中力の回復にもつながります。高次脳機能障害の方は、ひとつのことに注意を向け続けるのが難しくなるケースがあります。塗り絵は「この部分を塗る」という明確なタスクがあるので、注意を向ける対象がはっきりしています。
どんな方に向いているのか
リハビリとしての塗り絵が有効とされる対象は、想像より幅広いです。
脳卒中後の回復期にある方。外傷性脳損傷のリハビリ中の方。加齢による手指の機能低下がある高齢者の方。高次脳機能障害で注意障害や遂行機能障害がある方。
共通しているのは、「手を使う」「考える」「集中する」の3つを無理のない範囲で訓練したいという状況です。
作業療法士の方に話を聞くと、計算ドリルや文字の書き取りよりも「拒否感が少ない」という声をよく耳にします。リハビリは継続してこそ意味があるので、本人が嫌がらずに続けられるかどうかは、想像以上に重要なポイントです。
紙の塗り絵で起きる問題
ただし、紙の塗り絵をリハビリに使うと、いくつかの困りごとが出てきます。
手指に麻痺がある方は、色鉛筆を長時間握ること自体が負担になります。塗る訓練をしたいのに、握ること自体で疲れてしまう。本末転倒な状況が起きがちです。
手が震える方の場合、どうしても線からはみ出してしまいます。はみ出すたびに「失敗した」と感じて、やる気を失ってしまう。リハビリで大切な達成感が得られないのは深刻な問題です。
それから、細かいパーツが見えにくいという声もあります。視力の問題で、紙に印刷された線画が見づらい。拡大コピーすれば解決しますが、毎回その対応をするのは現場の負担になります。
デジタル塗り絵がリハビリにもたらすもの
こうした紙の課題を見ていくと、デジタルの塗り絵で解決できる部分がかなりあります。
画面をピンチで拡大できるので、細かい部分も見やすくなります。手指の負担も、タッチ操作なら色鉛筆を握り続けるよりずっと軽い。塗り間違えても「元に戻す」がワンタップでできるので、失敗のストレスがほぼなくなります。
タップで塗れる設定にすれば、手が震える方でもはみ出さずに塗れます。これは紙では絶対にできないことです。
あと、意外と大きいのが「完成できる」ということ。紙の塗り絵だと途中で疲れてしまって未完成のまま終わることが多いのですが、デジタルなら短時間で完成まで到達しやすい。「できた」という達成感が、次のリハビリへのモチベーションになります。
取り入れるときに気をつけたいこと
リハビリに塗り絵を取り入れる際、いくつか注意点があります。
まず、難易度の設定です。簡単すぎると訓練にならないし、難しすぎると挫折します。作業療法士やリハビリスタッフの方と相談しながら、その方の状態に合ったレベルを選ぶことが大事です。
次に、時間の管理です。リハビリとしての塗り絵は、長くても15〜20分程度にとどめた方がいいとされています。集中力が途切れた状態で続けても効果は薄いですし、疲労がたまると逆効果になることもあります。
そして、あくまで「楽しいもの」として提供すること。「これはリハビリだから」と厳しくやらせると、塗り絵の最大のメリットである「楽しさ」が失われます。本人が「またやりたい」と思える環境をつくることが、何よりも大切です。
まとめ
リハビリとしての塗り絵は、手指の機能訓練、視覚と運動の協調、注意力の回復など、複数の効果が期待できます。しかも本人が楽しみながら取り組めるので、継続しやすいという大きなメリットがあります。
「ぬりえる」では、拡大・縮小やタップ塗り、やり直し機能など、身体的な負担を減らしながら塗り絵を楽しめる環境を用意しています。リハビリの一環として塗り絵を検討されている方にとって、デジタルという選択肢が新しい可能性を開くかもしれません。