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作業療法と塗り絵:OTが現場で活用するポイント

ぬりえる編集部
作業療法リハビリ塗り絵巧緻性

作業療法(OT)の現場で、塗り絵が使われているのをご存じでしょうか。

「塗り絵ってレクリエーションでしょ?」と思う方もいるかもしれません。でも作業療法士さんの手にかかると、塗り絵は立派なリハビリの道具になります。筆圧の訓練、手指の巧緻性の回復、注意力の改善——目的を持って使うと、塗り絵の見え方がまったく変わってきます。

今回は、作業療法の現場で塗り絵がどう活用されているのか、整理してみました。

作業療法士が塗り絵を使う理由

作業療法の基本は「意味のある作業を通じてリハビリする」ことです。

たとえば、脳卒中の後遺症で手がうまく動かない方がいたとします。「ボールを握ってください」と言っても、それだけでは退屈で続きません。でも「この花を好きな色で塗ってみましょう」と言えば、同じ手指の運動でも意味が変わります。

塗り絵がリハビリに向いているのは、ひとつの動作の中に複数の機能訓練が含まれているからです。色鉛筆を握る(握力・巧緻性)。線の中に色を塗る(目と手の協調・注意力)。色を選ぶ(判断力・記憶)。これらが自然に組み合わさっています。

しかも、完成したら目に見える成果が残る。この「達成感」が、リハビリのモチベーションを維持するうえで大きいのだそうです。

手指の巧緻性と筆圧のコントロール

作業療法で塗り絵を使うとき、特に注目されるのが手指の巧緻性と筆圧です。

巧緻性とは、手指を細かく正確に動かす能力のこと。ボタンをかける、箸を使う、字を書く——日常生活で必要な動作の土台です。

塗り絵では、色鉛筆を持つ指の力加減、線からはみ出さないように手首を安定させる動き、パーツごとに塗り分ける細かな操作が求められます。これが巧緻性のトレーニングになります。

筆圧のコントロールもポイントです。力が入りすぎると色鉛筆の芯が折れる。弱すぎると色がつかない。「ちょうどいい力加減」を体で覚えていく過程が、機能訓練そのものです。

作業療法士さんは利用者さんの筆圧を観察しながら、「もう少し軽く持ってみましょうか」とフィードバックしていきます。数値では測りにくい微妙な変化を、塗り絵を通じて確認できるのも利点です。

高次脳機能障害へのアプローチ

塗り絵は手指のリハビリだけでなく、高次脳機能障害のリハビリにも使われています。

高次脳機能障害とは、脳卒中や事故の後遺症で、注意力・記憶力・判断力などに問題が生じる状態です。外から見えにくいので「見えない障害」とも呼ばれます。

たとえば「半側空間無視」という症状。視野の片側にあるものを認識しにくくなる障害です。塗り絵を渡すと、左半分だけ塗り残す、ということが起こります。作業療法士さんはこれを評価に使いつつ、「左側も塗ってみましょうか」と声をかけながら、注意を向ける訓練をしていきます。

また、注意力の持続が難しい方には、パーツ数が少ないシンプルな塗り絵から始めて、少しずつ複雑なものに進める。この段階的な調整(グレーディング)が、作業療法の専門性が活きるところです。

「レクの塗り絵」と「OTの塗り絵」の違い

同じ塗り絵でも、レクリエーションと作業療法では使い方がまったく違います。

レクリエーションの塗り絵は、楽しむことが目的です。好きな色で自由に塗って、完成したら「きれいだね」で終わり。それ自体にもちろん価値があります。

一方、作業療法での塗り絵には「目標」があります。「筆圧を安定させる」「15分間集中を維持する」「右手だけで塗り切る」など、利用者さんごとに具体的なゴールが設定されています。

そして「段階付け」があります。最初は大きなパーツの塗り絵から始めて、少しずつパーツを小さく、数を多くしていく。線の太さを変える。使う色の数を増やす。こうした段階的な難易度の調整を、作業療法士さんが計画的に行います。

さらに「記録と評価」があります。「はみ出しが減った」「20分間集中できるようになった」「左側も塗れるようになった」——こうした変化を記録し、次の訓練計画に反映していきます。

デジタルの塗り絵は作業療法に使えるか

紙と色鉛筆が基本の作業療法ですが、最近はデジタルの塗り絵を取り入れるケースも出てきています。

紙の塗り絵の長所は、色鉛筆を握る触覚フィードバックがあること、筆圧のトレーニングにそのまま使えることです。手指の巧緻性を鍛える目的であれば、紙の塗り絵は引き続き有効です。

ただ、紙の塗り絵には課題もあります。難易度の調整が手間であること、はみ出しが「失敗体験」になりやすいこと、利用者さんの経過記録を残しにくいことです。

デジタルの塗り絵はこうした課題を補えます。難易度をワンタップで変えられる。はみ出さない設定ができるので、成功体験を積みやすい。取り組んだ時間や完成までの過程がデータとして残る。

「ぬりえる」でも、パーツの大きさや数を段階的に変えられる仕組みを取り入れています。作業療法のグレーディングに近い考え方で、利用者さんの状態に合わせた塗り絵を提供できるようにしています。

もちろん、デジタルだけで紙を完全に置き換えるものではありません。筆圧の訓練には紙が向いていますし、触覚の刺激はデジタルでは再現しきれません。紙とデジタルを目的に応じて使い分けるのが、現実的な選択肢だと思います。

作業療法での塗り絵、大切なのは「目的」

塗り絵をリハビリに使うこと自体は、特別なことではありません。多くの作業療法士さんが日常的に取り入れています。

ただ、ただ塗り絵を渡すだけでは「レク」と変わりません。「何のためにこの塗り絵を使うのか」「この利用者さんにとってどんな意味があるのか」——目的を持って使うことで、塗り絵はリハビリの道具になります。

手指の巧緻性を取り戻すため。注意力を鍛えるため。達成感を通じて意欲を引き出すため。目的が明確であれば、塗り絵はシンプルだけれど効果的な機能訓練のひとつです。

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