ぬりえる

高齢者向けの塗り絵、どう選べばいいか分からない人へ

塗り絵の選び方高齢者介護

高齢者向けの塗り絵を探そうとして、ネットで検索してみた方は多いと思います。

でも出てくるのは「大人の塗り絵」ばかり。曼荼羅(マンダラ)みたいな細かいやつとか、花のイラストでもパーツが50個以上あるようなやつとか。「これ、80歳のおばあちゃんには無理でしょ」と思ったこと、ありませんか。

じゃあ高齢者向けに何を選べばいいのか。意外とちゃんと書いてある情報がないので、介護現場の知見と研究データをもとにまとめてみます。

線の太さがすべてを決める

まず一番大事なのが、輪郭線の太さです。

一般的な塗り絵の輪郭線は0.5mm〜1mmくらいです。これだと高齢者にはいくつかの問題が起きます。

視力が低下していると、線がどこにあるか見えにくくなります。白内障の方だとコントラストが下がるので、薄い線はほぼ見えません。

手が震える方だと、細い線の中を正確に塗ることができません。少しはみ出しただけで目立ってしまい、それが嫌で塗り絵をやめてしまうケースは非常に多いです。

高齢者向けには2mm〜3mm以上の太い輪郭線を選んでください。太い線なら多少はみ出しても線の幅に吸収されるので、仕上がりがきれいに見えます。

パーツの数は8〜20個が目安

次に大事なのが、塗るパーツの数です。

書店で売っている「大人の塗り絵」は、パーツが50個から100個以上あるものが多いです。細密画的な美しさがありますが、高齢者にこれを渡すと「どこから塗ればいいかわからない」と固まってしまいます。

認知症の方の場合、選択肢が多すぎると混乱します。これは「決定疲労」と呼ばれる現象で、選ぶこと自体に脳のエネルギーを使い果たしてしまうんです。

逆に3〜5パーツだと簡単すぎて、達成感が薄くなります。「子ども扱いされている」と感じる方もいます。

8〜20パーツくらいが、程よい達成感と取り組みやすさのバランスが取れるゾーンです。5分〜15分で完成できるのもこのくらいのパーツ数です。

モチーフは「知っているもの」

抽象的なデザインやマンダラは、若い世代の大人の塗り絵では人気があります。でも高齢者には不向きです。

理由は「何を塗っているか分からない」から。抽象的な模様を見ても「これは何?」となって、モチベーションが上がりません。

高齢者に向いているのは、ご本人が「知っているもの」です。

たとえば花。桜、菊、朝顔、紫陽花。「これ、うちの庭にも咲いてたわ」という会話が生まれます。

季節の行事もいいです。お正月の鏡餅、ひな祭りのお雛様、秋のお月見。季節感のあるモチーフは、時間の感覚を保つ訓練にもなると言われています。

身近な食べ物も人気があります。お寿司、天ぷら、和菓子。「お寿司は何が好き?」と会話のきっかけにもなる。

ポイントは「塗り絵を通じて会話ができるかどうか」です。塗ること自体が目的ではなく、塗り絵がコミュニケーションの道具になるのが理想です。

色の数も減らしたほうがいい

色鉛筆セットを渡すとき、36色セットや48色セットをそのまま出していませんか。

色の数が多すぎると、これもまた「決定疲労」の原因になります。「何色にしよう」で延々と悩んでしまい、塗り始められない方がいます。

最初は6〜12色くらいに絞って渡すのがおすすめです。赤・青・黄・緑・ピンク・オレンジ・紫・茶色あたりの基本色だけで十分です。

「もっと色が欲しい」と本人から言われたら、そのときに追加すればいい。選択肢を減らすことは制限ではなく、取り組みやすくするための配慮です。

困ったときの判断フロー

どの塗り絵を選べばいいか迷ったとき、こう考えてみてください。

ご本人が15分以上座っていられるか。15分が厳しそうなら、8パーツ以下のかんたんなもの。15分大丈夫そうなら、15〜20パーツのふつうのもの。

手の震えがあるか。あるなら線が太くてパーツが大きいもの。デジタルの塗り絵ならはみ出し防止機能を使うこともできます。

過去に塗り絵をやめてしまった経験があるか。あるなら、前回より確実に簡単なものから再スタートする。まずは「できた」の体験を取り戻すことが優先です。

完璧な塗り絵はない

最後に大事なことを書いておきます。

ここまでいろいろ基準を書きましたが、結局のところ「ご本人が楽しんでいるかどうか」がすべてです。

基準に合った塗り絵を渡しても楽しそうじゃなければ、それは合っていません。基準から外れた塗り絵でも夢中になっていれば、それが正解です。

観察して、聞いて、調整する。その繰り返しです。

「ぬりえる」では、利用者さんの反応に応じて難易度を自動で調整する仕組みを開発しています。3段階のモードを用意して、どれがご本人に合うかをスタッフさんやご家族が簡単に試せるようにします。

最適な塗り絵を探す手間そのものをなくしたい。それが私たちの目標です。